量子コンピューターは、従来のコンピューターでは困難な問題を高速に解決できる可能性を秘めた革新的な技術です。しかし、その実現には多くの技術的課題が存在し、その中でも最も重要なものの一つが「量子誤り訂正」です。
なぜ量子誤り訂正が必要なのか?
量子コンピューターの基本単位である**量子ビット(qubit)**は、非常に繊細な物理状態に基づいています。量子ビットは、0と1の重ね合わせ状態や、量子もつれといった量子力学的性質を利用して計算を行いますが、これらの状態は外部環境のわずかな変化(温度、振動、電磁波など)によって容易に崩れてしまいます。
量子誤り訂正の基本原理
- Shorコード:最初に提案された量子誤り訂正コードで、9つの物理量子ビットを使って1つの論理量子ビットを保護します。
- Steaneコード:7つの物理量子ビットを使い、より効率的な訂正を可能にします。
- 表面コード(Surface Code):現在最も有望とされるコードで、2次元格子状に量子ビットを配置し、局所的な操作で誤り訂正を行います。スケーラビリティに優れ、実用化に向けた研究が盛んです。
実用化への課題と展望
量子誤り訂正の導入には、膨大な数の物理量子ビットが必要となるため、現在の量子ハードウェアではまだ十分な規模に達していません。しかし、IBM、Google、Rigettiなどの企業が表面コードを中心に研究を進めており、フォールトトレラント量子計算(誤りに強い量子計算)の実現に向けた進展が見られます。
また、最近では量子誤り抑制(error mitigation)という、完全な誤り訂正を行わずに誤差の影響を軽減する手法も注目されています。これは、ノイズの多い中規模量子デバイス(NISQ)において実用的な計算を可能にするためのアプローチです。
まとめ
量子誤り訂正は、量子コンピューターを実用化するための基盤技術であり、今後の量子技術の発展において中心的な役割を果たします。量子ビットの脆弱性を克服し、安定した量子計算を実現するためには、誤り訂正技術のさらなる研究とハードウェアの進化が不可欠です。
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