Kishioka-Designの日誌

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2025年9月28日~10月4日:今週のITニュースヘッドライン

2025年9月28日~10月4日:今週のITニュースヘッドライン

Windows 11 の 2025 年秋アップデート(25H2)が正式リリース — 軽量化とセキュリティ強化が特徴

2025年9月30日、MicrosoftWindows 11 の次期機能更新版「バージョン 25H2(通称:Windows 11 2025 Update)」を一般提供開始したと発表した。このアップデートはこれまでの 24H2 と基本設計を共用し、「イネーブルメント パッケージ(有効化パッケージ)」方式で導入される軽量な更新であり、再起動のみで切り替え可能な方式になっている。
この 25H2 更新では、目立った新機能よりも後方互換性やセキュリティ強化に重点が置かれており、改良されたビルド/ランタイム脆弱性検知、AI支援による安全なコーディング支援、PowerShell 2.0 や WMIC(Windows 管理用コマンドライン)の削除などの調整が含まれる。 特に目新しい UI 変更や大幅な機能変更は少ないとされており、既存ユーザーにとっては「安定性強化」「寿命リセット」が主なメリットとなる見込みだ。
アップデートの提供は段階的に進められており、まずは 24H2 を動作しておりかつ互換性動作が確認された機器から順次展開される。なお、従来バージョン(たとえば 23H2 や Windows 10)からの移行には完全インストールが必要となる場合もある。
この更新は、Microsoft の年次更新ポリシーとも整合しており、Home/Pro 向けには 24か月、Enterprise/Education 向けには 36か月のサポートが提供される見込みである。 IT 管理者やエンタープライズ用途では、アップデート適用モジュールの互換性確認、ドライバ/周辺機器との衝突リスク、そして段階展開が鍵になるだろう。
この軽量な更新方式は、一見地味に見えるが、ユーザーへの負荷を抑えつつセキュリティ基盤を最新に保つアプローチとして注目される。今後の Windows 更新戦略や、他 OS/プラットフォームの追随動向にも目が離せない。

VMware vCenter / NSX 製品に重大な脆弱性Broadcom が緊急アドバイザリを公開

2025年9月29日、BroadcomVMware 製品の開発・提供企業)は複数の重要な脆弱性(CVE-2025-41250, CVE-2025-41251, CVE-2025-41252)を含むセキュリティ問題を公表し、VMware の仮想化/ネットワーク仮想化基盤製品 vCenter Server および NSX に影響があることを明らかにした。
最も深刻とされる CVE-2025-41250 は、vCenter の SMTP ヘッダーインジェクション脆弱性で、権限を持たないアカウントであっても、スケジュールされたタスク通知メールのヘッダー改ざんが可能になるというものだ。他の 2 件、CVE-2025-41251 と CVE-2025-41252 は NSX に関連する脆弱性で、パスワードリカバリー機構の不備やユーザー名の列挙が可能になる問題が含まれており、不正ログイン/ブルートフォース攻撃の足がかりになり得る。
Broadcom はこれら脆弱性を扱うアドバイザリ VMSA-2025-0016 を発行し、修正版や回避策を示している。ただし、いくつかの脆弱性(特に vCenter のインジェクション)には回避策が存在せず、速やかなパッチ適用が強く推奨されている。
企業側にとっては、これら影響範囲の広い仮想環境基盤が対象である点が特に問題だ。仮想化基盤は多くのクラウド環境、ハイパーバイザ基盤、ネットワーク仮想化レイヤーで使われており、攻撃者の侵入口になりうる。脆弱性を悪用されれば、内部ネットワークへの横展開や情報漏洩、制御系の乗っ取りなど被害拡大につながる可能性もある。
この発表を受けて、IT部門やセキュリティ担当者は、早急に自社/運用中インフラを点検し、未適用パッチを持つシステムの洗い出しと優先適用、さらには脆弱性スキャンやログ監視強化、アクセス制御の見直しを行うべきだ。仮想環境を前提としたインフラ設計では、こうした基盤のソフトウェアセキュリティ対策を早めに取り込む意識が不可欠である。

Qualcomm、新型 PC 向けチップ「Snapdragon X2 Elite」発表 — 電源オフ状態でも遠隔保守可能に

2025年9月28日、Qualcomm は企業向け PC 向け新型チップ「Snapdragon X2 Elite」を発表したと報じられた。このチップは“Guardian”と呼ばれる常時接続管理機能を搭載し、5G や無線通信を活用して、電源オフ(あるいはスリープ状態)でも遠隔保守/管理が可能になる設計を含むという。
これまでの PC 管理技術(たとえば Intel vPro 系列など)は、有線ネットワーク環境での遠隔制御を前提とするケースが多かったが、Snapdragon X2 Elite はワイヤレス常時接続を前提とする点が特徴だ。また、セキュリティ隔離やリモート更新機構も標準化が意図されており、ローカル推論用途を見据えた AI NPU の搭載なども視野に入れているという報道もある。
この動きは、PC/端末管理の概念を大きく拡張しうる。たとえば、完全オフ状態でも環境設定やファームウェア更新、障害対応といった操作を可能にすれば、運用管理コストの削減や迅速な対応性向上が見込まれる。一方で、セキュリティリスクも増す可能性があるため、認証強化、暗号化、アクセス制御、フェイルセーフ設計が不可欠となる。
企業の端末更改やモバイルワーク環境の刷新を考える際、このような高性能/高管理性を備えた Arm ベース端末の選択肢拡大は注目に値する。特に、従来 vPro が主流だった業務 PC 環境に対し、Arm ベースで代替可能性を示す布石となる可能性もあり、今後の展開に注目したい。

IntelTSMC への出資・協業を打診か — 外部ファウンドリ確保を模索

半導体業界において、2025年9月末頃、IntelTSMC に資本出資や製造協業を打診しているとの報道が各メディアでなされた。これは、IntelIDM(設計と製造を自社内で行う方式)を補完し、先端プロセス技術の確保を外部に依存する戦略的選択肢を持たせる動きとして注目されている。
Intel は、自前プロセスの限界や歩留まり課題、先端ノード技術の研究開発費高騰のなかで、TSMC 等最先端ファウンドリとの協業によってリスク分散を図ろうという動機がある模様だ。 また、Intel が自社設計と外部委託設計を併存させる体制を柔軟に整えることで、顧客ニーズに応じた調達戦略が可能になるという分析もある。
ただ、こうした動きには複数のハードルがある。ファウンドリ間での設計 IP 利用条件、優先権配分、顧客調整、さらには国家安全保障・技術統制の観点からの規制リスクなども絡む。特に米中間の半導体供給網の緊張下では、リスク管理と合意形成が容易ではない。
今後 Intel がこのような出資・協業をどの程度進めるか、また競合他社(SamsungTSMCGlobalFoundries など)がどう反応するかによって、グローバル半導体業界の競争構造や技術主導権構図が変化する可能性がある。

中国、米系半導体企業 6 社を規制対象に追加 — サプライチェーン不確実性が拡大

2025年9月25日、中国商務省が米系半導体関連企業 6 社を輸出規制リストや不信任リストに追加する方針を打ち出したという報道があった。 この措置は、対米半導体サプライチェーンに対する不透明性をさらに拡大させるものとみられており、EDA(電子設計自動化)ソフト、製造装置、クラウド/IP 提供契約など複数領域に影響を及ぼす可能性がある。
企業は、こうした規制対応リスクを回避するため、代替先の確保、在庫の積み増し、設計 BOM(部品表)の冗長化、マルチ調達戦略への移行などを迫られる。価格転嫁リスクや長期納期対応、サプライ不足リスクなど、調達面リスク管理が一層重要性を帯びるだろう。
加えて、設計資産の移転、IP 契約条件の見直し、ソフトウェア依存度の低減など、技術基盤の見直しが迫られる可能性もある。特に中国・米国双方での規制強化が続く中、企業は法令順守と技術ポートフォリオ戦略の最適化を二重で意識しなくてはならない。

Databricks と OpenAI が企業向けモデル統合へ — MLOps とデータガバナンス強化

2025年9月25日、Databricks と OpenAI は企業データ上で AI モデルを提供・運用する統合プラットフォーム構築に向けた協業を発表したとの報道があった。 この協業では、いわゆるレイクハウス(データレイク + データウェアハウス融合型基盤)運用環境上でのモデル配備、評価、ガバナンス機構を統合し、MLOps(機械学習運用)ワークフローを改善することが主目的とされている。
この統合により、モデル提供・更新プロセスの監査性、再現性、安全性を高め、企業の生成 AI 活用における信頼性を担保しようという狙いがある。特に、データガバナンス(どのデータを使い、どこにモデルを適用できるか)と評価指標/モニタリング基盤の統一は、AI 利用拡張時の課題のひとつであり、この協業はその解決を目指すものとなる。
一方で、競合ベンダーロックインの懸念、契約/SLA 条項の明確化、セキュリティ・プライバシーリスクなどは残る課題だ。特に企業によっては、モデル提供後の挙動を詳細に制御したいという要望もあるため、柔軟性と責任分担の設計が鍵になるだろう。

ハロッズで顧客データ流出 — サプライチェーン型リスクの再認識

2025年9月27日付近、英国高級百貨店ハロッズ(Harrods)が、一部顧客データを流出した旨の通知を発表したという報道があった。流出被害には、氏名、連絡先といった属性情報が含まれており、決済情報やパスワードまでは含まれていないとのことだ。
この事案の特徴として注目すべきは、直接のデータ管理主体(ハロッズ本体)ではなく、第三者プロバイダを経由した流出という可能性が指摘されている点だ。サプライチェーンを介した間接的なデータ侵害リスクが改めて浮き彫りになった。
企業はこうしたリスクを念頭に、サプライヤー・外部委託先とのセキュリティ契約、アクセス制御、ログ取得と監査可能性、侵害通知義務の設計などを見直す必要がある。特に、自社の責任範囲と委託先責任を明確に切り分けた統制設計が重要になる。

YouTube Music、AI ホスト(DJ)機能を試験導入 — コンテンツ UX の深化へ

2025年9月28日、YouTube は実験的プロジェクト「YouTube Labs」の一環として、音楽配信サービス「YouTube Music」に AI ホスト(いわば “AI DJ”)機能を試験導入したとの報道があった。この機能は、再生中の楽曲に関連するトリビア解説、次曲推薦、ユーザーとの会話形式インタラクションなどを AI が担うというもので、Spotify の AI DJ 機能と類似する体験を提供しようという狙いだ。
このような AI ホスト・機能導入は、単なる受動的なストリーミング体験から、一歩踏み込んだ文脈付き/対話型の音楽体験を目指すものだ。特に、リスナーが「聞くだけ」でなく「語りかけられるような体験」を求める潮流を先取りする試みと言える。しかし、実際のユーザー評価には賛否が出ており、「話しすぎ」や「無駄な付加情報が多すぎる」と感じる向きもあるとの指摘もある。
配信プラットフォーム競争の中で、コンテンツ UX 差別化要素として AI ガイド/ナビゲーション体験が次の一手になる可能性がある。今後、ユーザー選好・インタラクション設計・説明責任・誤出力制御といった課題が運用面で焦点になるだろう。

国内自治体 IT システム評価調査公開 — セキュリティ対策とガバナンスに注目

2025年9月28日、Sky株式会社が「自治体 IT システム満足度調査 2025-2026」(日経BP ガバメントテクノロジー)をもとに、自治体の運用管理・仮想化ソフト/サービス分野における満足度や課題点を公表したというプレスリリースが配信された。この調査に関して、専門家インタビュー形式で「セキュリティ対策評価制度」における企業・自治体の対応課題も併せて論じられている。
自治体 IT システムの特徴として、運用継続性、予算制約、レガシー技術依存、外部委託先との契約設計、セキュリティ更新や脆弱性対応能力などが日常的リスク要因として挙げられている。今回の調査では、これら運用/管理面での満足度や改善要望が顕在化している。
特に近年、サイバー攻撃ランサムウェアリスクが増加する中、自治体側にはセキュリティ対策の水準引き上げ、標準化制度の導入、評価機構の透明性確保、情報共有基盤強化などが求められる。調査の公表を契機として、自治体間ベンチマークや改善ロードマップの議論が活性化する可能性がある。

IT企業の組織改革動向 — 働きがい重視で人材不足に挑む

2025年9月28日、PR Times にて「人材不足に挑む IT 企業、社員の“働きがい”を軸に組織改革を進める」というテーマの発表が行われた。日本国内において、IT・テクノロジー企業が慢性的な開発者・エンジニア不足に直面する中、賃金や待遇だけでなく、やりがい・成長機会・組織文化・リモート制/フレックス勤務制度などを重視した改革を打ち出す企業が増えているという文脈が紹介されている。
具体的には、評価指標を「成果・プロセス・チーム貢献」に分けて見直す動き、異動/副業制度を柔軟に取り入れる試み、長時間労働削減や心身ケア制度の拡充、リモートワーク支援インフラ強化などが挙げられている。 また、組織横断型プロジェクト設計、技術ナレッジ共有制度、教育支援制度といった非金銭インセンティブ施策も併用している企業も紹介されている。
こうした動きは、単に「人を集める」だけでなく「定着させ成長させる」観点が重視されており、ソフトウェア開発品質維持・技術リスク対応力強化という観点からも意味を持つ。特に、消費者向けサービス開発や AI/先端技術領域で高速に変化する環境においては、技術者がモチベーション高く働く環境整備は競争力の源泉となり得るだろう。
 
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