
試合概要
プレミア・リーグ第7節、マンチェスター・ユナイテッド(以下「ユナイテッド」)はホーム、オールド・トラフォードにサンダーランドを迎え、2-0 で勝利を収めた。ユナイテッドにとっては不可欠な勝点3となり、またサンダーランドにとっては昇格組ながらも堅実な守備を試みたが及ばなかった。両チームともに勝利を目指しながらも、試合を制したのはユナイテッド。新加入のゴールキーパー、センネ・ランメンスがデビュー戦で無失点を達成し、守備と攻撃がかみ合った一戦だった。
前半早々にメイソン・マウントが先制ゴールを挙げ、さらにベンジャミン・シェシュコが追加点。この2点が決定打となった。サンダーランドは前半終盤にペナルティーを得たと思われた場面もあったが、VARによって判定は覆され、ゴールのチャンスを逸した。後半はユナイテッドが主導権を保ち、相手の反撃を許さず、試合を締めた。
この勝利により、ユナイテッドは得点力と安定感を示すとともに、監督ルベン・アモリムの立て直しにも一歩を踏み出す形となった。サンダーランドにとっては苦しい展開となったが、収穫のある時間帯や個人の奮闘も見られた。
試合展開
キックオフ直後、サンダーランドが「昇格チームらしい」速いテンポと鋭い出足を見せ、序盤から積極的な攻撃を仕掛けた。特にサイドを起点とする攻撃やクロスを多用し、相手守備を揺さぶろうとする意図が見えた。ただし、それに対してユナイテッドも慎重に構え、守備の陣型を乱されないように注意を払いつつ、逆襲の糸口を探す構えだった。
だが、その均衡はわずか8分に破られる。右サイド深くからのクロスを受けたブライアン・ムビュモが鋭いボールを供給し、ボックス内でメイソン・マウントが左足で冷静にコントロールからシュート。ゴールキーパーのローフスの手をかわし、ネットを揺らした。先制に成功したユナイテッドは一気に主導権を握ろうと攻勢を強める。
このゴールによってサンダーランドはやや動揺を見せ、前線からのプレスや連携にはズレが生じ始めた。ユナイテッドはそれを逃さず、攻撃の手を緩めない。ムビュモ、アマド・ディアロ)、ブルーノ・フェルナンデスらがボールを動かしながら、相手の守備ラインの裏を突く形を模索した。サンダーランドゴール前にクロスや折り返しを入れる場面が増え、相手を押し込む時間帯が続いた。
そして 30 分を過ぎたあたり、ユナイテッドは追加点を奪う。ディオゴ・ダロトのスローインがニアへ飛び、ノルディ・ムキエレが頭でつないだところを、シェシュコがゴール前で冷静にゴールに押し込む。これで 2-0 とし、試合はさらに流れがユナイテッド寄りに傾いた。
サンダーランドは反撃を図ろうと、ミッドフィールドでのボール回しを早め、ワイドを使った攻撃を意識するようになる。しかし、前半終了間際には緊迫したシーンがあった。シェシュコが相手選手との接触でペナルティーを得たように思われたが、VAR が介入。主審スチュアート・アトウェルがモニターで確認したうえで、実際には接触がなかったとして、判定を取り消した。この場面はサンダーランドにとって痛手であり、前半のうちに差を詰める可能性を潰された。
ハーフタイムを迎え、2-0 というスコアはユナイテッドにとって十分に余裕がある展開になった。ただし、サンダーランドも後半にかけて修正を図る可能性を残しており、油断はできない状況だった。
後半開始後もユナイテッドは主導権を保持する姿勢を崩さない。サンダーランドは攻守の切り替えを早め、前線からプレスを掛けながら、細かいパス交換で崩しを試みる。だが、ユナイテッドの中盤・守備陣の連携が機能し、サンダーランドがチャンスを作る場面は限定的だった。ゴール前に侵入しても、シュートを撃つまでのアイデアや精度を欠く攻撃が目立った。
一方でユナイテッドも相手ゴールを無理に荒らすような攻撃は控え、守備を固めつつ隙を見て速攻を仕掛ける手法を選ぶ。中盤でのボール奪取から前線に展開し、特にムビュモとアマドがサイドで仕掛けを担った。だが追加点には至らず、サンダーランドの守備を崩すには至らない。
終盤は交代策も含めて安全運転に入る流れ。疲労も見えはじめたユナイテッドは、ディフェンスラインを引き気味にしつつ、カウンター狙いを細かく狙った。そして、終盤のサンダーランドの反撃にも守備陣が引かず、ランメンスの好守もあって無失点で逃げ切った。こうして 2-0 で試合終了。ユナイテッドが安定した勝利を収めた。
このように、試合は前半の2得点が鍵となり、後半は守備の統率とセットプレー・速攻の精度によってユナイテッドが盤石に支配した形だ。サンダーランドは前半の判定覆しの影響も含め、惜しい時間帯はあったが、攻撃の質や破壊力に乏しかった。
スタッツハイライト
この試合では、ユナイテッドが支配率、シュート本数、枠内シュート、ボール支配、チャンス数など多方面で上回った。具体的には、シュート本数でユナイテッドが多く打ち、枠内シュートも複数あった。一方、サンダーランドは相手陣内侵入数そのものはあっても、シュートに持ち込む場面は限られた。ユナイテッドの守備ブロックも機能し、被シュートを抑制する形になった。
ゴールキーパー対決でも注目で、ユナイテッド新加入の センネ・ランメンス がデビュー戦でクリーンシートを達成。相手の決定機を幾つかストップし、守備ラインとの連携もまずまずだった。サンダーランド側の ローフス も好守を見せたが、2失点を防ぐには至らなかった。
また、ユナイテッドの攻撃陣ではムビュモ、マウント、アマドらが連携を図り、中盤でのパス回しからの展開力も光った。サンダーランドは途中で交代を重ね守備強化を図るも、前半の差を埋め切れなかった。
イエローカードなどのカード面ではミッドフィールドやディフェンダーで両チームに警告が出た場面もあった。試合中盤以降、接触プレイや守備でのファウルが散見された。こうしたカードリスクも両チームにとって注意すべき要素だった。
総じて、スタッツ上もユナイテッドが優位に立ち、試合内容と結果が整合した一戦と言える。
選手寸評
センネ・ランメンス(GK/ユナイテッド)
デビュー戦で無失点は高評価。幾つか危険なシーンでも冷静に処理し、守備ラインとの連携もまずまず。試合終盤のクロスへの対応なども落ち着いており、今後の起用にも期待がかかる。
デビュー戦で無失点は高評価。幾つか危険なシーンでも冷静に処理し、守備ラインとの連携もまずまず。試合終盤のクロスへの対応なども落ち着いており、今後の起用にも期待がかかる。
レニ・ヨロ(CB/ユナイテッド)
若手らしく機動性を活かしつつ、守備ラインの統率に貢献。相手の裏への走りにも対応しようとする意欲が見えるが、経験を活かしたカバーリングや判断はまだ改善の余地あり。
若手らしく機動性を活かしつつ、守備ラインの統率に貢献。相手の裏への走りにも対応しようとする意欲が見えるが、経験を活かしたカバーリングや判断はまだ改善の余地あり。
マタイス・デリフト(CB/ユナイテッド)
守備の中心として安定感を提供。大崩れはなく、相手アタックを読み切ろうとする姿勢が目立った。ただし前線への繋ぎなどではもう少し余裕を持たせられる場面があった。
守備の中心として安定感を提供。大崩れはなく、相手アタックを読み切ろうとする姿勢が目立った。ただし前線への繋ぎなどではもう少し余裕を持たせられる場面があった。
ルーク・ショウ(LB/ユナイテッド)
この日はやや動きが遅く、相手攻撃の突破を許すシーンも。攻撃参加の頻度は見られたが、守備での対応にやや不安定さが残った。
この日はやや動きが遅く、相手攻撃の突破を許すシーンも。攻撃参加の頻度は見られたが、守備での対応にやや不安定さが残った。
ディオゴ・ダロト(LWB 相当/ユナイテッド)
スローインから追加点を生んだ場面は彼の長所が出たが、トータルではパス精度や判断でやや精彩を欠いた印象。後半途中で交代されたことも、起用者としての期待と現状との差を示している。
スローインから追加点を生んだ場面は彼の長所が出たが、トータルではパス精度や判断でやや精彩を欠いた印象。後半途中で交代されたことも、起用者としての期待と現状との差を示している。
ブルーノ・フェルナンデス(CM/ユナイテッド)
前線へのパス供給、ミドルシュート、攻撃の組み立てと多岐にわたる動きが目立った。得点こそなかったが、攻撃の起点として存分に存在感を発揮。
前線へのパス供給、ミドルシュート、攻撃の組み立てと多岐にわたる動きが目立った。得点こそなかったが、攻撃の起点として存分に存在感を発揮。
アマド・ディアロ(RW/ユナイテッド)
スピードと突破力を活かした仕掛けが幾度か効果的だった。サイドを崩す動きは脅威となり、相手守備陣にプレッシャーをかけ続けた。チャンスを演出する場面も。ただ、最後の精度を求められる。
スピードと突破力を活かした仕掛けが幾度か効果的だった。サイドを崩す動きは脅威となり、相手守備陣にプレッシャーをかけ続けた。チャンスを演出する場面も。ただ、最後の精度を求められる。
メイソン・マウント(FW/ユナイテッド)
先制ゴールの質は非常に高く、技術と冷静さが際立った。攻撃参加は控えめだったが、名を残す。今後もこのような決定力を継続できるかが鍵となる。
先制ゴールの質は非常に高く、技術と冷静さが際立った。攻撃参加は控えめだったが、名を残す。今後もこのような決定力を継続できるかが鍵となる。
ブライアン・ムビュモ(FW/ユナイテッド)
先制のアシストを記録し、サイドからの供給や仕掛けで攻撃にアクセントを与えた。守備の戻りも見せ、全体的に献身的な動きを見せたが、得点には結びつかなかったのは惜しい。
先制のアシストを記録し、サイドからの供給や仕掛けで攻撃にアクセントを与えた。守備の戻りも見せ、全体的に献身的な動きを見せたが、得点には結びつかなかったのは惜しい。
ベンジャミン・シェシュコ(ST/ユナイテッド)
追加点を決めたストライカーとしてもっとも注目される存在。相手守備の裏をつき、冷静なゴールへの流れを演出した。得点感覚と動き出しの良さが光った。
追加点を決めたストライカーとしてもっとも注目される存在。相手守備の裏をつき、冷静なゴールへの流れを演出した。得点感覚と動き出しの良さが光った。
戦術分析
●ユナイテッドの戦術面
布陣・フォーメーション
ユナイテッドは中盤に厚みを持たせながら、ウイングを有効利用する形を採用したようだ。サイドのスペースを使いつつ、中央も突破できる布陣が、前線の選手たちを効果的に活かす構造をつくった。
ユナイテッドは中盤に厚みを持たせながら、ウイングを有効利用する形を採用したようだ。サイドのスペースを使いつつ、中央も突破できる布陣が、前線の選手たちを効果的に活かす構造をつくった。
速攻とサイド突破の組み合わせ
序盤に見られたのは、相手が整っていない時間を突いた速攻と、サイドからのクロスを絡めた組み立てだ。特にムビュモやアマドをサイドに配置しつつ、中盤からの縦パスやスルーパスで相手守備を分断しようとする意図が明確だった。
序盤に見られたのは、相手が整っていない時間を突いた速攻と、サイドからのクロスを絡めた組み立てだ。特にムビュモやアマドをサイドに配置しつつ、中盤からの縦パスやスルーパスで相手守備を分断しようとする意図が明確だった。
ロングスローやセットプレー活用
追加点が生まれたシーンはスローインを起点としたものだった。こういった「小型のセットプレー」や飛び道具的な資産を使えることは、相手にとって警戒すべき点になる。相手の守備陣もスローイン対応で裏を取られた場面があった。
追加点が生まれたシーンはスローインを起点としたものだった。こういった「小型のセットプレー」や飛び道具的な資産を使えることは、相手にとって警戒すべき点になる。相手の守備陣もスローイン対応で裏を取られた場面があった。
守備の安定性と中盤制圧
後半に入ってからは攻撃よりも守備優先に切り替えたが、中盤でのボール奪取やパスカット、守備ラインの統率性が有効に機能した。相手の攻撃を中盤で食い止め、最終ラインにはそれほど大きな負荷をかけさせなかった。このバランスを維持できたことが勝因の一つと言える。
後半に入ってからは攻撃よりも守備優先に切り替えたが、中盤でのボール奪取やパスカット、守備ラインの統率性が有効に機能した。相手の攻撃を中盤で食い止め、最終ラインにはそれほど大きな負荷をかけさせなかった。このバランスを維持できたことが勝因の一つと言える。
●サンダーランドの戦術面
昇格組らしい積極性とサイド攻撃
サンダーランドは序盤からサイドを使って幅を出し、クロスや包囲を試みる戦法をとった。特に相手のサイドバックの裏を狙う動きが目立った。ただし、その供給の精度や連動性にはやや不安が残った。
サンダーランドは序盤からサイドを使って幅を出し、クロスや包囲を試みる戦法をとった。特に相手のサイドバックの裏を狙う動きが目立った。ただし、その供給の精度や連動性にはやや不安が残った。
中盤での守備ブロックと奪取狙い
中盤で数人をかけてボールを奪いに行く意図は見られ、狭いスペースでの奪取やセカンドボール競り合いを重視した。ただし、ユナイテッドの動きの速さや複数ラインの連携には対応しきれない場面もあった。
中盤で数人をかけてボールを奪いに行く意図は見られ、狭いスペースでの奪取やセカンドボール競り合いを重視した。ただし、ユナイテッドの動きの速さや複数ラインの連携には対応しきれない場面もあった。
交代による守備強化の試み
後半、中盤・守備陣の交代を重ねて守備安定化を図ろうと試みた。守備ラインを引き気味にする切り替えもあったが、既に差がついていたこと、相手のカウンターの脅威を抑えるには至らなかった。
後半、中盤・守備陣の交代を重ねて守備安定化を図ろうと試みた。守備ラインを引き気味にする切り替えもあったが、既に差がついていたこと、相手のカウンターの脅威を抑えるには至らなかった。
決定力の欠如
攻撃を組み立てる場面は散見されたが、最後のフィニッシュに迫る形を作るまでには至らなかった。シュート精度やゴール前のアイデアに欠け、相手ゴールを脅かすシーンは散発的だった。
攻撃を組み立てる場面は散見されたが、最後のフィニッシュに迫る形を作るまでには至らなかった。シュート精度やゴール前のアイデアに欠け、相手ゴールを脅かすシーンは散発的だった。
ファンの反応
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「シェシュコはこの試合のマン・オブ・ザ・マッチだ」
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「ランメンスをすでに信頼できる存在と見なせる」
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「ダロトは今日も冴えなかった。ベンチに回すべきでは」
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「ムビュモのアシストと動き出しは効いていた。だがもう1点取ってほしかった」
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「昇格組を相手にしてようやく勝てた、という意見もあるが、勝ちは勝ち。前半の支配が全てだった」
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「アモリムの戦術が少しずつ浸透してきたようだ」
一方、サンダーランド側のファンからは悔しさを滲ませる声が多く、特に前半の判定覆しや得点機会を活かせなかったことを課題とする意見が多かった。また、「守備の安定感も感じられた」「昇格組として最後まで集中を切らさなかった」という評価も見られた。
総評
このマンチェスター・ユナイテッド vs サンダーランド戦は、スコア以上に内容が示すところが多い試合だった。ユナイテッドは序盤から高い集中力と意図的な攻撃をもって主導権を握り、2ゴールというリードを得て以降は守備を固めながらも反撃を許さない構図を作った。特に、中盤と守備ラインの連携、試合全体のバランスの取り方が光った。
新顔ランメンスの活躍、シェシュコの得点力、攻撃陣の動き出しなどプラス材料も多く、今後に向けて手応えを感じさせる一勝となった。反面、攻撃の最後の精度、交代選手のインパクト、守備ラインの脆さの抑制など、改善すべき点も明らかだ。
サンダーランドは昇格組として見せ場を作ろうと試みたが、前半の失点とペナルティー判定覆しが致命的な打撃となった。後半の修正はあったが、相手の統制力と守備の強度を崩すには至らなかった。ただし、昇格組が格上相手に気後れせずに戦った姿勢は評価に値する。
この試合を機に、ユナイテッドは勢いを取り戻す可能性を示したと言える。アモリム監督はまだ批判や重圧を抱えているが、この勝利は一つの信頼回復の材料になるだろう。サンダーランドはこの敗戦を糧に攻撃陣の精度と決定力をさらに磨く必要がある。
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