
日本政府が2040年代に運転開始を目指す「高速炉」。この名前を最近ニュースで耳にする人も多いかもしれません。高速炉とは、従来の原子力発電に使われている「軽水炉」とは異なり、“中性子の速さ”に着目した新しい原子炉のタイプです。
では、この高速炉とはどのような仕組みで、なぜ注目を集めているのでしょうか。
では、この高速炉とはどのような仕組みで、なぜ注目を集めているのでしょうか。
高速炉の仕組みと特徴
通常の原子力発電所では「軽水炉」が主流であり、水を減速材として用いて中性子の速度を遅くし、ウラン燃料の核分裂を制御しています。これに対して高速炉は、水の代わりに「ナトリウム」などの金属を冷却材として使用し、中性子を高速のまま利用するのが特徴です。
廃棄物削減への期待
高速炉が注目される理由のひとつは、「高レベル放射性廃棄物の削減効果」です。
通常の原子炉では、使用済み核燃料の中に長期間放射能を持ち続ける核種が多く含まれますが、高速炉ではそれらを燃やし尽くすように再利用することが可能です。これにより、廃棄物の量と毒性の両方を減らすことができ、最終処分の負担を大幅に軽減できると期待されています。
通常の原子炉では、使用済み核燃料の中に長期間放射能を持ち続ける核種が多く含まれますが、高速炉ではそれらを燃やし尽くすように再利用することが可能です。これにより、廃棄物の量と毒性の両方を減らすことができ、最終処分の負担を大幅に軽減できると期待されています。
日本の高速炉開発の歩み
日本では、かつて「もんじゅ」という実験炉が建設され、1990年代に運転が開始されました。しかし、ナトリウム漏れ事故などのトラブルが相次ぎ、2016年に廃炉が決定。その後、高速炉開発の方向性は一時停滞しました。
しかし政府は、原子力技術を「カーボンニュートラル社会に向けた重要な選択肢」と位置づけ、再び高速炉の実用化を目指す方針を打ち出しています。現在は、フランスとの国際協力を通じて実証炉の設計研究が進められており、2040年代の運転開始が目標とされています。
世界での動向と今後の課題
海外でも、フランスやロシア、インド、中国などが高速炉の研究を進めています。特にロシアでは「BNシリーズ」、中国では「CFRシリーズ」と呼ばれる高速炉がすでに稼働段階に入っており、日本もこれに追随する形です。
一方で課題も多くあります。ナトリウムは水と反応しやすく、冷却材として扱うには高度な安全技術が求められます。また、建設・運転コストも高く、経済性の面でも改良が必要です。安全性・信頼性・コストのバランスをどう取るかが、今後の実用化の鍵となるでしょう。
未来への展望
高速炉は、単なる新しい発電技術ではなく、「持続可能な原子力利用」を実現するための重要な一歩と位置づけられています。資源の有効活用、廃棄物の削減、そしてカーボンフリーな電力供給。これらの要素を同時に実現できる可能性を秘めているのが、この高速炉なのです。
今後の研究開発の成果次第では、2040年代の実証炉運転が、次世代エネルギー社会の転換点となるかもしれません。
「もんじゅ」の挫折を経て再び挑戦する日本の高速炉開発。その行方に、世界中が注目しています。
「もんじゅ」の挫折を経て再び挑戦する日本の高速炉開発。その行方に、世界中が注目しています。
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