
中国の「成長回復」観測:2025年Q3 GDPが予想上振れ、だが構造的リスクは残る
10月20日に発表された中国の2025年第3四半期(7–9月)GDPは、前期比・年率換算で市場予想を上回る伸びを示した。短期的には工業生産や輸出の持ち直しが寄与し、景気の底打ち期待を呼んだ。だが内訳を見ると、年率成長は前年同期比で鈍化しており、不動産セクターの停滞と地方政府の財政制約が引き続き下押し圧力を与えている。消費回復も地域差が大きく、サービス消費の回復は限定的だ。投資面ではインフラ投資や一部のハイテク分野に支えられている一方、民間企業の設備投資は慎重だ。短期的には統計上の驚きが世界のリスク選好を改善させ、アジア市場やコモディティに波及したが、中期的視点では債務構造や不良債権問題、そして不動産デフォルトリスクが依然として大きな懸念材料として残る。つまり「V字回復」と断定するには時期尚早で、政策面では量的緩和寄りではなく、精緻な財政・構造改革の組合せが求められる状況だ。
Apple、iPhone需要好感で株価が史上最高値更新—ハードとソフトの“二刀流”期待
10月20日、Appleの株価が年初来の上昇をさらに拡大し、史上最高値を更新した。市場は新iPhoneの販売が堅調であること、ハードウェアのマージン改善と「Apple Intelligence」等のソフト/サービス収益拡大期待を高く評価した。ハードの周期性リスクは残るが、サービス売上の継続的成長がEPSの下支えとなるとの見方が強い。また、半導体や供給チェーンの改善、そして米中関係の一部緩和観測も投資家心理を押し上げた。だが高値更新はバリュエーションの見直しを促す面もあり、今後の業績予想との整合性が検証ポイントとなる。短期的には市場センチメントが先行しており、四半期決算での数字とガイダンスが改めて注目される段階だ。
Teslaの四半期決算:売上は拡大も利益低下で株価に下押し圧力
10月22–23日発表のTeslaの2025年Q3決算は、売上高が前年同期比で拡大した一方、純利益や営業マージンは市場予想を下回り、決算後に株価は下落した。原因としては、研究開発やAI・ロボティクス投資の膨張、車両価格調整、そしてカーボンクレジット収入の減少が挙げられる。経営サイドは将来の成長機会(ロボタクシー、Optimus等)を強調するが、短期的には「成長期待」と「現実の収益性」のギャップが意識されやすい。投資家は成長投資がいつ利益に結び付くか、そして既存自動車事業の利益率がどの程度回復するかを注視している。加えて、経営報酬やガバナンスに関する議論が株式評価に影を落とす可能性もある。
米CPIの“落ち着き”で株式は史上高更新—だが金融政策の不確実性は残る
10月24日に発表された米消費者物価(CPI)関連の結果が概ね予想を下回り、市場はリスク資産を買い進めた。インフレが想定より鈍化したことで、投資家はFRBの利下げ期待を強め、米大型株を中心に株式市場は上値を追った(ダウが節目を突破する場面も)。ただし、CPI一回の結果だけで「中立化」を断定するのは早計だ。労働市場のタイトさや賃金動向、エネルギー価格の再上昇リスクなどがインフレ再加速の火種となり得るため、FRBは依然としてデータ依存姿勢を崩していない。市場は短期的にボラティリティを低下させているが、金融政策の先行きを巡る不確実性が再び顕在化すれば、株価は敏感に反応し得る。
英国:物価は一服も2%目標からは遠く—国債利回りと財政運営への波及
10月22日に発表された英国の消費者物価指数(CPI)は、予想外の上昇が見送られ、前年同月比で3.8%と横ばいが続いた。食品価格の上昇が一服したことが主因とされるが、依然としてBOEの目標(2%)を大きく上回っている点が焦点だ。市場はこれを受けて「利下げの早期実施」観測をやや後退させたが、同時に英国の財政健全性やソブリンスプレッドにも敏感に反応している。特に格付けや長期金利の動きは住宅ローンや企業の資金調達コストに直結するため、財政運営とBOEの金融政策の“協調”が今後のキーになる。投資家はBOEの追加的な政策判断と、政府の成長戦略がどの程度信頼に足るかを注視している。
エネルギー市場:ロシア向け制裁・地政学リスクで原油上昇、インフレ波及を警戒
10月中旬〜下旬にかけての米欧の対露措置や輸出規制の観測により、原油先物は上昇した。特にロシアの主要石油企業に対する追加制裁観測が広がった局面では、供給不安が意識され、エネルギー株が買われる一方、消費側ではガソリンや電力コストの上振れが懸念される。原油価格の上昇は短期的にインフレ率を押し上げ、中央銀行の金融政策判断(利下げのタイミングや量)に逆風となる可能性が高い。さらに、エネルギー価格の持続的上昇は世界の脆弱な新興国のバランスシートを圧迫するため、金融安定上のリスクも要注意だ。
米連邦政府の閉鎖リスクと市場心理:短期ノイズだが波及は無視できない
10月20日前後、米議会を巡る予算・債務上限交渉の不透明感が依然として株式市場の下振れリスク要因として存在した。政府閉鎖の懸念は短期的にはリスク・オフを誘い、安全資産へのシフト(国債、金)を強めるが、実際の経済ファンダメンタルには段階的に影響が波及する。特に連邦支出が一時停止すると、GDP寄与度の高い消費・投資が鈍る懸念があり、企業業績の下方修正や信用コスト上昇を通じた金融市場への影響が長期化するリスクがある。投資家は政治イベントのタイミングと経済指標の発表スケジュールを照合し、ポートフォリオのリスク管理を行っている。
ECB・学術会議の議論から見えた“金融循環”の重視—利下げサイクルの見極めへ
10月下旬のECB主催の会議や関係者コメントでは、「金融条件の伝達」と「金融循環」の重要性が改めて強調された。ユーロ圏では2024–25年にかけた利上げ局面の反動で、2025年は段階的な利下げが開始されたが、会議参加者は利下げが金融安定や債券市場の歪みを生まないか慎重に見極める必要を訴えた。市場はECBが“本当に利下げサイクルを終えたか”を問い続けており、成長・インフレ・賃金動向の複合シグナルが、今後の追加緩和判断を左右する見通しだ。ユーロの為替動向も輸入物価を通じてインフレに影響するため、ECBは総合的な視野でのコミュニケーションが求められる段階にある。
テック決算の“明暗”──IBMのクラウド減速、マーケットの期待調整
10月23日にはIBMの決算が発表され、クラウド・ソフトウェア分野の成長鈍化が明らかになったことで株価は下落した。対照的に一部のハイテク企業はAI関連期待で高値を維持するが、総じて市場は「収益の質」に厳しくなっている。四半期ごとの売上・営業利益だけでなく、ストックベース(サブスク)収益の伸びやマージン改善の持続性が投資判断の中心となっている。投資家は今後のガイダンスと長期の収益性を重視し、好決算でもガイダンスの弱さがあれば株価は失速する構図が続く。
日本市場:与党再編の“金融的波及”と日経急騰—スタンスは「期待先行」
10月20日、国内政治の再編観測(連立や新内閣期待など)が表面化すると、株式市場は「景気刺激期待」を先取りして急上昇した。特に日経平均は外需・輸出関連だけでなく、設備投資や財政刺激の恩恵が想定される金融・建設セクターにも買いが入った。だが政治イベントが与える効果は一過性であることが多く、実際の政策実行—予算配分、規制緩和、補助金の具体化—が確認されるまでは投機色の強い上昇になりやすい。投資家は「政策の中身」と「財政持続性」を注視しており、短期的には楽観ムードが優勢でも、中長期ではファンダメンタルズの実行力が評価を左右する。
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