逆境を跳ね返し、覇気を取り戻した真紅の猛攻。マンチェスター・ユナイテッド 4-2 ブライトン：第9節レビュー

試合概要

10月25日（日本時間）に行われた、プレミアリーグ第9節。ホームにてマンチェスター・ユナイテッド（以下「ユナイテッド」）がブライトン＆ホーヴ・アルビオン（以下「ブライトン」）を迎え、スコアは 4-2 でユナイテッドが勝利した。
この勝利はユナイテッドにとって、リーグ戦３連勝となるもので、チームの勢いを加速させる一戦となった。
一方、ブライトンにとっては、過去ユナイテッド戦で強さを見せてきただけに、この敗戦は痛手となる。
試合は前半にユナイテッドが先制・追加点を奪い優位に進めるも、後半にかけてブライトンの反撃が炸裂。だが最後にユナイテッドが突き放し、勝点３を掴んだ。
ここから、試合展開からスタッツハイライト、選手寸評、戦術分析、ファンの反応、そして総評と順を追って振り返る。

試合展開

試合は序盤から、ユナイテッドが明確に攻める姿勢を示した。開始直後から主導権を握ろうと動き、特に司令塔として機能するブルーノ・フェルナンデスが早々にチャンスを演出。セットプレーからのヘディングがわずかに外れるなど、前線の意識の高さが見て取れた。
一方でブライトンも、攻めあぐねるわけではなく、カウンターを仕掛ける局面を窺っていた。だが、ユナイテッドの出足が速く、ボール奪取からの切り替えが機能していたため、ブライトンが前線で持つ時間は限られた。

前半24分、ついにユナイテッドが先制に成功する。新加入のマテウス・クーニャがペナルティエリア手前から右足で鋭くカーブを描くシュートを突き刺し、クラブ初ゴールを挙げた。このゴールが試合の流れを明確にユナイテッド側へ傾けたと言ってよい。続いて34分、守備的ミッドフィルダーとして本来の役割にとどまらず前方に飛び出したカゼミロがペナルティ外からシュート。これは相手選手に当たってコースが変わり、ゴールネットを揺らした（オウンゴール扱いともなった）ことで、ユナイテッドが2-0とリードを広げた。

この時点でユナイテッドの雰囲気は良く、前線の動き、サイドからの仕掛け、守備からの速い切り替えが噛み合って、ブライトンをかなり受け身に追い込んだ。ブライトンは中盤での守備ブロックを敷こうとしたが、ユナイテッドのサイドチェンジや速攻で崩される場面が目立った。前半終了間際には、ユナイテッドがさらにゴールに迫る場面があったが、ここは得点ならず。それでも2-0で折り返すには充分な内容であった。

後半に入り、ユナイテッドが試合を“3点目”で決めにかかる中、60分過ぎに遂にその瞬間が訪れた。61分、ブライアン・ムエウモがゴール前で受けたパスを左足で冷静に沈め、3-0。これでユナイテッドはほぼ主導権を握り、“安心”ムードがスタンドに広がった。しかし、ユナイテッドらしく“簡単には”行かないのがこのチーム。少しずつ試合のペースが落ち、ブライトンに隙が生まれ始める。

74分、ブライトンがついに反撃の足掛かりを掴む。ダニー・ウェルベックが直接フリーキックから素晴らしい一撃を決めて1点を返す。これでスコアは3-1となり、ブライトンの鼓舞となった。ブライトンは以降、枚数をかけて攻めに出るべく交代カードを使い、前掛かりになりながらもユナイテッドの守備の“締め切り”の甘さを突こうとした。

90分＋2分にはブライトンの若手、チャラランボス・コストゥラスがヘディングでさらに1点を返し、スコアは3-2。スタジアムの雰囲気は一気に緊張感を帯びた。ユナイテッドの勝利を疑う声がちらほら出始める中、だがユナイテッドは終盤にもう一度ギアを上げた。90分＋6分、ムエウモがまたしてもゴールを決め、4-2となり勝負を決定づけた。

この劇的な勝利により、ユナイテッドはかつて“苦手”とされてきたブライトン戦での勝利を手にし、チームのムードを大きく持ち上げた。ブライトンは逆転の芽を育てながらも、一歩及ばず。失点の機会を自ら招いた部分もあり、反省すべき内容を残した。

スタッツハイライト

この試合を振り返るにあたって、以下のような数字が印象に残る。

ショット数：ユナイテッド13本／ブライトン17本。
枠内シュート数：ユナイテッド9本／ブライトン5本。
ポゼッション率：ブライトン56.4％／ユナイテッド43.6％。興味深くも、支配されたにもかかわらずユナイテッドが勝利。
コーナーキック：ユナイテッド1本／ブライトン6本。守勢に立たされながら守り切ったユナイテッド。
このように、ブライトンが数的に攻め続けたにもかかわらず、ユナイテッドが効率的にゴールを奪い、底力を見せた。

また、個々の重要な“瞬間”としては、クーニャの初ゴール、カゼミロの前線参加からの追加点、ムエウモのダメ押しゴールと、決定機を逃さないユナイテッドの姿勢が表れていた。逆に、ブライトンは終盤の2失点が致命的となった。

選手寸評

ここでは主だった選手をピックアップして寸評を記す。

マテウス・クーニャ
先制ゴールを決めた新戦力。ゴール前での落ち着きと、守備面での貢献意識も見え、チームにとって重要な“得点源”として機能しつつある点が好材料である。試合序盤から積極的に動き、攻撃のスイッチになった。

カゼミロ
本来は守備的ミッドフィルダーだが、この試合では前線に飛び込んでのゴールを奪い、さらに中盤での守備カバーも安定。経験値の高さを随所に見せつけ、チームの軸として機能した。

ブライアン・ムエウモ
彼の2ゴールは決定的だった。特に後半61分の3-0目、そして90分＋6分のダメ押しゴールにより、試合を“決めた”と言って良い。速さ、ドリブル、シュートの精度といった攻撃の武器をフルに発揮していた。

ブルーノ・フェルナンデス
得点には絡まなかったが、司令塔としてチームのテンポをコントロールし、攻撃の起点となるプレーを多数見せた。300試合出場を迎えたという報もあり（※英報道）その貫禄も垣間見えた。

ダニー・ウェルベック（ブライトン）
元ユナイテッドの選手として特別な一戦だったが、74分にフリーキックで1点を返し、チームに反撃の流れをもたらした。年齢や立場を考えれば貴重な存在であり、このような“流れを変える”場面で光った。

チャラランボス・コストゥラス（ブライトン）
90分＋2分にヘディングで1点を返した若手。追い上げる雰囲気を生み出したが、結局得点はここまで。今後、こうした場面での継続した活躍が求められる。

戦術分析

●ユナイテッドの戦術

ユナイテッドは3-4-2-1あるいは変形の前線参加型システムで試合に臨んだ模様。守備時には3バック＋ウイングバックがブロックを作り、中盤はカゼミロとフェルナンデスがダイナミックに機能。攻撃時にはムエウモやクーニャがサイドから仕掛ける形が頻出した。
興味深いのは、ポゼッション率で劣りながらも効率良く得点を奪っている点。これは、ユナイテッドが「数的優位を奪われても、速攻・縦への推進力・ゴール前での冷静さ」で補っていたからと言える。ブライトンのハイプレスを受けながらも、相手のミスや隙を突いてスイッチを入れる流れが明確だった。加えて、カゼミロの前線飛び出しや、ムエウモの一対一突破など、“数のロジック”ではなく“質と決定力”が際立っていた。

守備面では、ブライトンにコーナーキックを6本献上しながらも得点を許したのは2点に抑えた。守備ラインおよびカバーリングの連携が比較的良好で、特に“終盤に集中力を維持して突き放した”点が評価できる。

●ブライトンの戦術

ブライトンは56％超のポゼッションを持ちながら、決定機をきちんと得点に結びつけられなかった。攻める形としては、ウイングを使った仕掛け、ボックス内侵入の回数もあったが、ユナイテッドの切り替えや守備ブロックでリズムを崩された場面が多かった。
後半に交代を有効活用して攻勢を作り出したが、そのタイミングが少し遅かったとも言える。3-0というスコアで迎えた後半中盤以降からようやく“追いかける”形になってしまった。こうしたリスクを抱えながら攻めに出る姿勢には一定の評価ができるものの、最初にリードされてしまったことが大きなハンデとなった。

●キーポイント

ユナイテッドが数的不利でも「一瞬のスピード」と「前線の飛び出し」で主導権を握ったこと。
ブライトンはボール保持では勝ったが「ゴール前でのラストパス・決定力・守備のミス耐性」で上回られなかった。
最後にムエウモが突き放すゴールを奪えたことで、試合の流れを完全にコントロールできた。
ユナイテッドの守備ラインが終盤に緩まなかったのも勝因。ブライトンの攻撃的交代にも応じて対応できた。

ファンの反応

ユナイテッド支持者からは「攻める姿勢が戻ってきた」「先制点を奪えたのが大きい」「ムエウモをもっと使おう」という肯定的なコメントが目立った。一方、ブライトンのファンからは「ボールを持てたのに逆転できなかった」「守備の甘さが勿体ない」「次節に向けて立て直してほしい」といった悔しさと期待が交錯する声があった。

スタジアムでは、ユナイテッドサポーターが3点目を奪った場面で大きな歓声をあげ、試合終盤の4点目で安心した表情を見せていたという報告も。逆にブライトンのゴール直後には、客席の雰囲気が少しざわつき、最後まで勝利を信じる声が大きくなったが、結果には届かなかった。

総評

この試合は、単なる「4-2」というスコア以上に、ユナイテッドの“復活”を象徴する内容だった。ポゼッションで劣りながらも、効率よく得点を奪い、最後まで集中を切らさず勝利をものにしたことは、今季のチームにとって大きな指針となる。選手個々のパフォーマンスも上向きで、特にクーニャ、カゼミロ、ムエウモといったキーマンが試合を通じて存在感を示した。

一方で、ブライトンの持つボールの優位性や攻撃の意欲は評価できるが、“開始時点で失点を許す”という悪いクセと、決定機を逃すことで勢いを削がれた点が痛かった。今後、守備の安定性と攻撃のラストピースを磨ければ、十分に上位を狙えるチームだ。

総じて、ユナイテッドはこの勝利を契機に“別のステージ”に入った可能性を感じさせる。一方で、ブライトンはこの悔しさをバネに、次節以降の巻き返しが期待される。次回の両チームの動きにも引き続き注目したい。