
試合概要
2025年11月1日、プレミアリーグ第10節にて、トッテナム・ホットスパー・スタジアムで行われたトッテナム対チェルシーのロンドン・ダービー。両チームともリーグ上位に位置し、上位争いにおいて重要な一戦とされていた。試合はチェルシーが34分にジョアン・ペドロ(João Pedro)の得点で先制し、そのまま逃げ切って チェルシーが1-0で勝利 した。トッテナムにとってはホームでの勝利を逃し、チェルシーにとってはダービーでの連勝を伸ばした成果となった。
試合展開
試合開始直後は両チームとも慎重に様子を探る入りとなった。トッテナムはホームの利を活かして積極的にボールを動かそうとし、チェルシーは守備を固めつつカウンターを意識する構えだった。前半10分まではやや静かな展開で、決定的なチャンスというよりも互いにポジションを整える時間が続いた。
20分を過ぎるとチェルシーがややペースをつかむ。中盤でのプレスが効果を見せ始め、特にモイセス・カイセド(Moisés Caicedo)が守備と攻撃の切り替えで輝きを見せた。トッテナムのディフェンスラインが若干高めに保たれていたこともあり、チェルシーはその裏をつくシーンを何度か演出した。
そして34分、試合を動かすプレーが起きる。トッテナムのミスからチェルシーがボールを奪い、カイセドがトッテナムのディフェンダー、ミッキー・ヴァン・デ・ヴェン(Micky van de Ven)からボールを奪取。そのままパスを供給してジョアン・ペドロがゴール前で詰めてネットを揺らし、チェルシーが先制点を挙げる。トッテナムの守備がほころんだ瞬間だった。
先制を許したトッテナムはその後、攻撃のテンポを上げようと試みるが、チェルシーの守備ブロックとプレスに阻まれ、なかなかリズムを掴めない。トッテナムの攻撃は断続的に起こるものの、威力あるシュート、あるいは決定的なパスまで繋がることが少なく、チェルシーの守備陣が冷静に対応していた。特に後半に向けて、トッテナムは「何かしなければ」という焦りが徐々に表面化していた。
ハーフタイムを挟み、後半に入ってもチェルシーは大きくスタイルを変えず、前半の貯金を活かすように展開。チェルシーはボールを保持しつつ、トッテナムが仕掛けてくる裏を警戒しながら、カウンターへの切り替えを幾度か試みる。トッテナムはホームの観客を背に、若干攻め手に出る姿勢を強めるが、チェルシーの守備の集中力も高く、トッテナムの攻撃はゴールに迫るというよりも「シュートまで運べない」場面が続いた。
後半中盤以降、トッテナムは攻勢を強めるも、組み立てに時間を要し、チェルシーの中盤での守備網、特にカイセドやリース・ジェームズ(Reece James)らのインターセプトが効いていた。70分以降、トッテナムの疲労も見え隠れし、攻撃の迫力が徐々に落ちていく。一方でチェルシーも追加点こそ奪えなかったが、リズムを保ちつつ相手の反撃をことごとく封じた。
試合終盤、トッテナムは必死にゴールを狙ったが、チェルシーの守備ブロックが固く、最後までゴールを割るには至らなかった。結果として試合は1-0で終了。僅差ながら、内容としてはチェルシーがやや主導権を握った展開だったと言える。試合終了のホイッスルと同時に、ホームのトッテナムのサポーターからはブーイングが響き、満足感からは程遠い夜となった。
スタッツハイライト
選手寸評
-
グリエルモ・ヴィカリオ(GK): ホームでの守備で幾度か好守を見せたが、チーム全体の流れを変えるほどではなかった。
-
ミッキー・ヴァン・デ・ヴェン(CB): チェルシーにボールを奪われて先制を許した場面の主な対象であり、守備面で難しい時間が続いた。
-
ソン・フンミン(FW): 決定機に至るプレーは少なく、攻撃面で存在感を出し切れなかった。ホームで期待された働きを欠いた。
-
モイセス・カイセド(MF): 中盤のハードワークとボール奪取から先制の起点を作り、「ゲームチェンジャー」とも評された。
-
リース・ジェームズ(MF): 中盤での守備的役割をこなしつつ、攻撃時にも供給役として機能。守備への安定感をもたらした。
-
ジョアン・ペドロ(FW): 一瞬の隙を突いて得点を挙げ、勝利を決定づけたフィニッシャーとしての働きが光った。
-
ロベルト・サンチェス(GK): トッテナムの数少ないチャンスを冷静に処理し、クリーンシート達成に貢献。
戦術分析
チェルシーはこの試合において、「ハイプレス+中盤の数的優位+守備ブロックの速やかな切り替え」という戦術を非常に効果的に機能させた。特にカイセドを軸とした中盤の守備からの攻撃転換が鍵となり、トッテナムの若いディフェンスラインにプレッシャーをかけ続けた。前半34分の先制点は、その戦術が機能した典型的なシーンだった。
一方、トッテナムはホームという環境もあり、積極的に攻撃を仕掛けたかったはずだが、相手の守備陣形とプレスに対してリズムを掴めず、ボール保持から攻撃への移行がスムーズにいかなかった。特に予想得点値(xG)が0.05という極めて低く、得点機を作り出せなかった点が戦術的敗因といえる。
また、チェルシーは守備時に中央を締め、サイド攻撃をある程度誘導することでトッテナムに自由を与えず、逆にサイドからのカウンター機を複数回演出。トッテナムがボールを保持して攻め手を探る時間帯でも、チェルシーが主導権を握る形となった。ホームのトッテナムにとっては攻撃のテンポを維持できなかったことが重く響いた。
ファンの反応
試合後、トッテナムのファンからは厳しい声が多く聞かれた。特にホームでの攻撃の乏しさや、シュート数・枠内シュート数の少なさに対して失望の声が目立った。「こんな試合は見たくなかった」「言い訳できない試合だった」といったコメントが散見され、ホームでブーイングが鳴り止まなかった。
チェルシーファンからは、「ようやく中盤が機能した」「ロンドンダービーで勝てたのが大きい」という肯定的な反応が出ている。特にカイセドのパフォーマンスとペドロの得点が評価され、「このまま連勝を続けてほしい」という期待の声が強い。
総評
この試合はスコアだけ見れば「1-0」というシンプルな勝利だが、その背景には戦術・選手個々の働き・精神的な優位性など、複数の要素が絡んでいた。チェルシーは中盤の支配と守備の安定を土台に、トッテナムの攻撃を封じて勝利を手にした。一方でトッテナムは、期待された攻撃力を発揮できず、ホームでの弱さが改めて浮き彫りになった。
ロンドンダービーという舞台で、特別なドラマがあったわけではないが、両チームにとって今後のシーズンを左右しかねない「課題の洗い出し」という意味では非常に価値のある一戦だった。チェルシーはこの勝利を弾みに、上位争いを本格化させる可能性を感じさせた。トッテナムは逆に、ホームでの勝負強さ・攻撃構築の改善が急務といえる。
今後、この勢いを各チームがどう維持・改善していくかが注目される。ロンドンの夜は静かに終わったが、その静けさの中に次へ向けた大きな示唆が刻まれていた。
■Kishioka Design Blog
■Kishioka-Design日誌(はてなブログ)
■note







