
2026年7月27日から8月2日までの女子サッカー界では、秋のアジア競技大会に臨むなでしこジャパンのメンバー発表が大きな注目を集めました。国内ではWEリーグの新シーズン開幕に向けた準備が本格化。一方、海外では遠藤純の重傷が発表されるなど、厳しいニュースも届いています。
試合の少ないオフシーズンでありながら、代表、クラブ、海外組のそれぞれで、今後の勢力図につながる重要な動きが見られた一週間となりました。

■新生なでしこジャパン、アジア競技大会へ22選手を選出
日本サッカー協会は7月27日、9月から10月にかけて愛知県を中心に開催される第20回アジア競技大会に臨む、なでしこジャパンのメンバー22人を発表しました。
チームを率いるのは狩野倫久監督。内田篤人コーチ、近賀ゆかりコーチらがスタッフとして加わります。今回の構成で目を引くのは、22人中21人が国内でプレーする選手であり、当初選出された海外組はスコットランドのレンジャーズFCに移籍したばかりのGK大場朱羽のみという点です。
WEリーグで継続的に出場してきた選手を中心にしながら、将来性のある若手にも大きく門戸を開いたメンバーとなりました。発表時点で初招集は10人。さらに7月31日には、ちふれASエルフェン埼玉のFW生田七彩が追加招集され、初招集選手は11人となっています。
GKでは浅野菜摘、福田史織、大場朱羽を選出。フィールドプレーヤーには成宮唯、塩越柚歩、中嶋淑乃、宝田沙織、上野真実ら経験のある選手が入る一方、後藤若葉、鈴木菫、桑原藍、榊原琴乃、西尾葉音など、代表チームで新たな一歩を踏み出す選手も多く名を連ねました。
■国内組主体の選考が示す「代表の裾野拡大」
今回のアジア競技大会は、主力を集めて目先の結果だけを追う大会というより、代表候補の幅を広げる重要な機会になりそうです。
長谷川唯、藤野あおば、山下杏也加、清家貴子といった欧米クラブでプレーする中心選手の多くは今回のメンバーに含まれていません。その分、WEリーグで実績を積んできた選手や、年代別代表で経験を重ねてきた若手が国際舞台で試されます。
唯一の大学生として選ばれた東洋大学のDF大箸桜子も注目選手です。大箸は7月17日付でJFA・WEリーグ特別指定選手に認定され、三菱重工浦和レッズレディースでもプレーできるようになりました。大学、WEリーグ、フル代表をつなぐ新しい育成ルートの象徴的な存在といえるでしょう。
大会で結果を残した選手が、今後のフル代表争いに加わる可能性は十分にあります。2027年の女子ワールドカップを見据えても、今回の選考は選手層を厚くするための重要な一手です。
■10月13日にドイツと対戦、世界基準を測る重要な一戦へ
7月29日には、なでしこジャパンが10月13日にドイツ女子代表と国際親善試合を行うことも発表されました。試合はドイツのブレーメンで開催されます。
ドイツはフィジカル、球際の強度、前線への展開力を兼ね備えた世界屈指の強豪です。アジアの相手とは異なるスピードと圧力を経験できるため、日本が世界大会で上位を目指すうえで非常に価値のある試合になります。
アジア競技大会で若手や国内組の可能性を探り、その後のドイツ戦で欧米クラブ所属選手を含めた主力チームを再構築する流れも考えられます。今回選ばれた選手の中から、ドイツ遠征まで一気に評価を高める存在が現れるかも注目されます。
■遠藤純が右膝前十字靱帯を負傷、今季残り試合を欠場へ
海外で活躍する日本人選手に関しては、非常に残念なニュースが届きました。
NWSLのエンジェル・シティFCは7月30日、FW遠藤純が右膝前十字靱帯を負傷し、シーズン終了までの負傷者リストに入ると発表しました。遠藤は7月11日のサンディエゴ・ウェーブ戦で負傷。2026年シーズンは9試合、計431分に出場していました。
遠藤は2024年2月にも右膝前十字靱帯を負傷し、長期にわたるリハビリを経て2025年8月に復帰していました。ようやくピッチで本来のプレーを取り戻しつつあった時期だけに、今回の再負傷は本人にとって極めて厳しいものです。
遠藤の持ち味は、左サイドからの鋭い仕掛けだけではありません。守備への献身性、複数ポジションへの対応力、味方と連係してスペースを作る動きは、なでしこジャパンにとっても貴重な武器でした。今は復帰時期を急ぐのではなく、身体と心の両面を含めて十分な回復期間を確保することが何より重要です。
■WEリーグは8月22日の開幕へ、暑熱対策を明確化
国内のWEリーグはオフシーズン中ですが、8月22日に開幕する2026-27シーズンへ向けた準備が着々と進んでいます。
7月29日には、新シーズンの飲水タイムとクーリングブレークの運用ルールが発表されました。暑さ指数を示すWBGTが31度以上の場合はクーリングブレーク、28度以上31度未満の場合は飲水タイムを実施します。21度以上28度未満でも、両チームが合意すれば飲水タイムを設けることができます。
WBGTはキックオフ90分前、30分前、ハーフタイムに計測され、前後半それぞれの実施判断に反映されます。猛暑が続く日本で8月にシーズンが始まる以上、選手の安全と競技の質を両立させるために欠かせない対応です。
■新競技規則を導入、抗議行動や差別的言動に厳格対応
WEリーグは同じく7月29日、2026-27シーズンから新しいサッカー競技規則を適用することも発表しました。リーグ戦では8月22日の第1節、クラシエカップでは9月12日のリーグステージ第1節から導入されます。
特に注目されるのが、不適切、侮辱的、攻撃的、差別的な発言を隠す目的で口を覆う行為や、主審の判定に抗議して選手やチーム役員がフィールドを離れる行為などを退場対象とする規定です。
単なるルール変更にとどまらず、差別的言動を見逃さない姿勢と、審判への集団的・威圧的な抗議を抑える狙いが明確に示されています。選手だけでなく、監督やスタッフにも高い規律が求められるシーズンになりそうです。
■大学生2選手を特別指定、育成とプロの距離を縮める
JFAは7月28日、大箸桜子と中村優那の2選手を、2026-27年のJFA・WEリーグ特別指定選手として認定したことを発表しました。
東洋大学の大箸は三菱重工浦和レッズレディース、中京大学の中村はセレッソ大阪ヤンマーレディースが受け入れ先となります。この制度により、選手は大学のチームに所属したままWEリーグの公式戦に出場できます。
大学女子サッカーには高い能力を持つ選手が数多くいますが、プロの強度や判断速度を日常的に経験できる機会には限りがあります。特別指定制度を活用して大学年代からWEリーグの環境に触れることは、選手の成長速度を高めるだけでなく、将来のなでしこジャパン強化にもつながります。
■新シーズンの日程も具体化、各クラブの準備が最終段階へ
この一週間には、WEリーグとクラシエカップの一部ホームゲームについて、開催時刻や会場も相次いで決定しました。
INAC神戸レオネッサは、10月21日のジェフ千葉レディース戦をノエビアスタジアム神戸で、12月9日のアルビレックス新潟レディース戦を三木総合防災公園陸上競技場で、いずれも12時から開催します。
日テレ・東京ヴェルディベレーザについても、クラシエカップの9月23日・新潟戦を多摩市立陸上競技場、10月11日・サンフレッチェ広島レジーナ戦をAGFフィールドで開催することなどが決まりました。
大きな移籍だけでなく、会場、暑熱対策、新競技規則といった運営面も整い始めています。8月22日のリーグ開幕が近づくなか、各クラブのチーム作りはいよいよ最終段階に入ります。
■若手の台頭と海外組の復帰を待つ夏
7月27日から8月2日の女子サッカー界は、「新しい選手への期待」と「負傷者を支える時間」が交差した一週間でした。
アジア競技大会では、国内組を中心とする新生なでしこジャパンが国際舞台に挑みます。WEリーグでは新シーズンに向けた制度と環境の整備が進み、大学からプロ、そして日本代表へとつながる育成ルートも広がりつつあります。
その一方で、遠藤純の再負傷は、海外で戦い続けることの厳しさを改めて浮き彫りにしました。遠藤が再び笑顔でピッチに立つ日を待ちながら、新たに代表へ加わった選手たちがどこまで成長できるのか。2026年後半の日本女子サッカーは、世代交代と競争の行方が大きな見どころになりそうです。
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